今回は、『第三世界の主役 「中東」』について感想を書いていく。
感想
読み終えての感想としては、めちゃくちゃ読みやすい本だった。
しかも、普段ニュースでは全く知り得ない中東の実情を実際に関わっている人の視点ですごいリアリティ高く描写していて、続きが知りたくてどんどん読み進めてしまった。この表現が合っているのかはわかないが、臨場感と没入感のある内容だった。
まず、日本を含む資本主義社会の西側諸国を「第一世界」、ロシア・中国などの共産主義社会の東側諸国を「第二世界」、そして、それに属さないが成長が著しい東南アジアや中東、アフリカなど西にも東にも属さない発展途上の南の国々を「第三世界」と呼ぶらしい。
中東の歴史的な経緯の解説や中東と周辺国の相関図は、とてもわかりやすかった。そのおかげで、ただでさえ似たような国名が多くて各国の関係性が複雑で理解し難い中東情勢だが、解像度が格段に上がったと思わせてくれる。内容の紹介は長くなるので省かせてもらうが、気になれば是非買って読んでみて欲しい。教科書的な説明とは違う臨場感があって満足度は高いと思う。
あと、作者の石田和靖さんが実際に中東の成長著しい国々を実際に見てきて経験した中東のエピソードはとてもリアルだった。日本で報道されているようなテロや戦争、石油のイメージがいかに小さい視野でしか中東を見ていなかったか気付かされた。中東はちょっと前までは実は日本を日本製品をすごく尊敬してくれていたらしい。そんなの知らなかった。けど、最近は日本が"検討"ばかりしていて行動しないせいで、あらゆるチャンスを逃し、その地位を韓国や中国に奪われてしまってきているという。そういう、行動しない日本に対する"もどかしさ"と、このままでは日本は本当に次の世界のリーダーになり得るポテンシャルを持つ中東から相手にされなくなってしまうのではないかという"危機感"から、中東のリアルを知ってもらった上で、中東にビジネスチャンスを見出して挑戦して日本を再起させて欲しいという気持ちがすごく伝わってくる。外交は中国に、工業製品は韓国に抜かれてしまったが、日本にはまだまだ世界に誇れるものがあるので、これ以降は他国に遅れを取らないで欲しい。そんな気持ちだった。
正直、これを読んでいて、2つの観点で危機感を抱いた。
一つは、新興国のリアルを知らずに、それを抜いたヨーロッパ圏、北米、東アジアの世界で物事を見ていたということ。完全に中東を見逃していた。日頃日本でニュースになっているイスラエル、ハマスの戦争は、中東の一部であり、それ以外のサウジアラビアやイランなどの中東の大国の動きもちゃんと見ないと、中東の大局が見えていないと等しいのだろう。これについては、今この気付きを得られてよかった。今後は、しっかり学んでいこうと思う。
もう一つは、ポテンシャルがある中東における日本の存在感が低下していることだ。元々中東で日本がそれほど信頼されいたということすら知らなかったのだが、それを知った今、昨今の中東に対する日本のイスラエルに加担する姿勢によって中東からの信頼を失っていること、日本の競争力が低下して日本製品が求められなくなってきているということは、看過できない。特に、好意を持ってくれていたのに、こちらが失望させてしまっているのがツライ。商人気質な中東と、職人気質な日本は、良いパートナーになれると書かれていたが、そうだと思った。まずは西側に寄りすぎない外交をし中東諸国に日本が信用に足る国であると示し、日本が競争力を取り戻していかなければならない。自分には何ができるだろうか。
まとめ
中東の知らないリアルを知れたのと、中東における日本のポジションを認識できたので、総じて満足度が高かかった。と同時に、やはり最近の日本に対して危機感を持っている人は結構いるんだなと認識できたし、次の自分の子供たちの世代に良い日本社会を渡せるよう、自分の命の使い方をよく考えよう。